「矯正歯科専門医による抜歯を伴うワイヤー矯正による矯正治療前後の変化」

抜歯を伴うワイヤー矯正で張っていたエラもスッキリ

画像説明 :

①主訴 : 上の前歯の並び

②診断名あるいは主な症状 : 左下第二小臼歯の歯冠崩壊を伴う叢生

③年齢 : 36歳1ヶ月

④治療に用いた主な装置 : エッジワイズ・セラミック装置

⑤抜歯部位 : 上下顎左右第一小臼歯

⑥治療期間 : 1年5ヶ月

⑦治療費概算(外税) : 初診料 ¥5,000  診断料 ¥50,000  初診料 ¥720,000  処置料 ¥7,000

⑧リスク副作用 : 所見無し

 前回からお伝えしている12年ほど前の症例です.英語で “Gills Swell” っていう,エラの張ったひとの,ワイヤー矯正(マウスピースでない)による矯正治療終了後,アゴのラインがすっきりと整ったことをお伝えしました.今回はその歯列の変化についてです.

 左下の5番目の歯が崩壊していましたので,抜歯部位は上下左右5|5 / 5|5.矯正動的治療期間=実際に歯を動かした期間1年7ヶ月でフィニッシュしました.

 池坊や古流といって生け花にも様々な流派があるように,矯正テクニックにも,ツイード法やヴァリ・シンプレックスといった様々な方法が存在するのですが,カマクラデントフェイシャルオーソピディクス・山本歯科・矯正でルーティーンにおこなわれている,インディアナ大学で故バーストン教授が開発し,矯正歯科鎌倉 dentofaco 院長 : 山本一宏が,真の日本人のために改良した独自の方法 MEMO= minimum Eassential Mechanics in Orthodontics では,前歯のリトラクション=後方移動を,他の方法が犬歯と4前歯を二回に分けておこなってゆくのに対し,アンマス= En Masse いちどきに一塊として行ってゆきますので,少し短い治療期間が約束されます.

 この症例では,矯正治療前,左下の5番目の歯が崩壊していましたため,通常抜歯部位は上下左右4|4 / 4|4のところ,上下左右5|5 / 5|5抜歯で矯正治療にあたりました.

 以前第72回日本矯正歯科学会松本大会でも発表しましたように,先天性欠如=生まれつき歯ができない方や,第2回矯正専門医会で発表した多数の歯が崩壊した症例で,入れ歯やブリッジ,インプラント等の方法によらず,通常は抜歯の対象になる8=智歯=親知らずをアップライトして噛み合わせに参加させる,矯正学的補綴法を紹介させていただきましたが,治療前,左下5が崩壊していたこの症例でも,矯正学的手法でこのスペースは全て閉鎖しました.

 もし,この症例,セファロによる診断を間違えて,非抜歯で矯正してしまったら,口も顔もでかくなってしまっただけでなく,左下5の補綴として,さらに入れ歯やブリッジ,インプラント費用が加算されたことでしょう.誰も,口や顔をでかくして,さらに余計な治療費の負担までしてまで,歯並びを整えようとは思わないはず・・・

  1. セファロって何?
  2. セファロの歴史
  3. セファロの目的 A) 形態分析による矯正歯科診断・抜歯基準・矯正治療方針の立案 B) 矯正治療前後の比較による矯正治療効果の判定 C) 成長量・アゴの成長発育方向の判定 D) 矯正治療結果の安定性の判定

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カマクラデントフェイシャルオーソピディクス
鎌倉市小町1-5-21森ビル3F
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院長:矯正歯科専門医 山本一宏
日本矯正歯科学会認定医・矯正歯科専門医
日本歯科矯正専門医認定機構(JBO)認定矯正歯科医
日本歯科矯正専門医学会(JSO)会員
日本矯正歯科協会(JIO)正会員
日本成人矯正歯科学会認定医
American Dental Association,
American Association of Orthodontists &
World Federation of Orthodontists, Member

「抜歯を伴う矯正治療の歴史」チャールズ・ツイードの功績

DrCharlesTweed

前々回,前回とお伝えしてきたように,矯正歯科の元祖,茶の湯で言えば千利休に当たる,エドワード・アングルは非抜歯論者でした.

“神様が32本の歯をくださった”・・・がその理論背景.

4本の小臼歯抜歯による,世界的にスタンダードとなっている,エッジワイズ治療法は,アングル門下のチャールズ・ツイードによって発展してきました.

ツイードは非抜歯論を貫徹したアングル師匠にいわば叛旗を翻したのでした.

なみ居る先輩たちが・・・

“アングル師匠の言うことを聞かなくちゃダメじゃないか!”

“じゃあいったい誰が1番うまく治せたかここに並べてみようじゃないか?”

・・・の一言で反駁し,やはりツイードの症例が他のどのオーソドンティストが治験した症例よりも優れていて,しかも何年立っても後戻りを起こさず,顔の美しさも優っていたのです.

彼のこの発言から現在に至るまで,わたしたち矯正歯科医は,学会で自分の治した症例の模型を陳列する事を連綿と続けてきております.

矯正歯科に従事するからには,症例展示は必須のこと.学会にも症例を提出しない,ホームページもイラストで済ませる.これには賛成できません.

TweedTriangle
抜歯基準のために設定されたツイード三角=IMPA90°が理想とされる

また,チャールズ・ツイードは,セファロ上で,ツイード三角を理想として,下顎下縁平面と下顎中切歯の歯軸のなす角度が 90 ° であるべきとしました.図に示した症例では,初診時 110°.ツイードが示した基準値である 90° にするためには,小臼歯抜歯をして,20° アップライトしなければなりません.2.5° = 1mm 換算しますので,この症例では 8mm. しかし,字面どおりでは,dish-in (お皿のような顔?) ・・・といって,おばあちゃまのような寂しい口元になってしまうので,実際にはこの半分 = 4mm のリトラクション= 後方移動を目標に,治療計画を設定してゆきます.

下顎下縁平面が緩やかな人も,急傾斜した方もいるので,のちにインディアナ大ではL1- NB= 4mm .下顎中切歯切縁とおでことB点(= 歯に影響されない歯槽最前方点) を結ぶ線までの距離が4mm が基準値であるとしました.ちなみに非抜歯論を掲げる学派の中には,こういった基準値を公にしている人は,まだいないようです.

 

  1. セファロって何?
  2. セファロの歴史
  3. セファロの目的 A) 形態分析による矯正歯科診断・抜歯基準・矯正治療方針の立案 B) 矯正治療前後の比較による矯正治療効果の判定 C) 成長量・アゴの成長発育方向の判定 D) 矯正治療結果の安定性の判定

「非抜歯で矯正するということは歯列を拡大すること!」

美少女製造業

「非抜歯で矯正するということは歯列を拡大すること!」

以前この blog でご紹介した通り

頭蓋は脳頭蓋と顔面頭蓋に分類されます

ヒトの顔を形づくる顔面頭蓋のうち

その80%が

上の歯が植わっている上顎骨と

下の歯が植わっている下顎骨

歯科大の法医学の教授が

乾燥頭蓋から粘土で生前の顔を再現する

複顔法についても紹介させていただきました

非抜歯で矯正するということは歯列を拡大すること!

・・・つまり

顔をでかくすること

おちょぼ口は褒め言葉

・・・でも

でかい口はそうではない

顔が小さいは褒め言葉

・・・でも

でかい顔はそうではない

看板には”歯科・矯正歯科”ってあるのに

セファロ分析もせずに (セファロって何?・・・にジャンプ!)

非抜歯非抜歯・・・っていって

拡大矯正歯科しかしないところに行けば

ブスにされてしまいます!

矯正専門開業団体が上げている歴史上全ての症例のうち

抜歯で治した比率は57.4%

大相撲の入幕に何か力が働いていることを見抜いたのは

アメリカの統計学者でした

通常の取り組みと明らかに開きがあったのです

非抜歯で矯正するということは歯列を拡大すること!

非抜歯しかしない?
カニじゃあるまいし
横にしか行けない?
プロなのに??

カニじゃあるまいし

横にしか行けない?

わたしたち矯正歯科医は

歯列を拡げたり

縮めたり

歯冠より長い歯の根をを平行移動させたり

歯を長くしたり

逆に骨の中に押し戻してゆくこともできます

拡大の技術しか持ち合わせていない歯医者は避けて無難です

 

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  2. セファロの歴史
  3. セファロの目的 A) 形態分析による矯正歯科診断・抜歯基準・矯正治療方針の立案 B) 矯正治療前後の比較による矯正治療効果の判定 C) 成長量・アゴの成長発育方向の判定 D) 矯正治療結果の安定性の判定

セファロの目的  D) 矯正治療結果の安定性の判定

20YrsPostRetentionOrthoCase

矯正歯科の目標は・・・

  1. 機能性の回復= しっかりと噛めること.車検からピカピカで返ってきても,エンジンがかからなければダメ!
  2. 安定性の確保= この症例のように,10年経っても,20年経っても安定して,くずれない歯列.
  3. 審美性の獲得= 片目の美女がありえないように,従前の機能の上に立つ美.

ここで,カマクラデントフェイシャルオーソピディクス・山本歯科・矯正 = 矯正歯科鎌倉 dentfaco  blog が,sixcre サーバー上に移行した直後にご紹介させていただいた,矯正治療終了後20年が経過した安定症例に登場していただきましょう.

上に掲げた症例TRさま.

画像説明 : TRさまは,18歳の半ば,矯正装置=ブレースを付けたまま,アメリカから帰国しました.当院院長が所属しているAAO= アメリカ矯正歯科医師会は,世界中にネットワークを持ち,ブレース = 矯正装置をつけたままの転院が可能です.治療費のバランスフォームまで含んだトランスファーフォームがあるのです.当院での1年半におよぶ矯正動的継続治療を経てフィニッシュしました.

上に掲げた画像は,矯正装置を外してから20年が経過した時点ものです.すべての歯が,まっすぐで,隙間なく,デコボコもなく,4歯の小臼歯抜歯をアメリカにてすでに済ませていましたが,抜歯空隙も微塵も残っておらず,フロスを通せば,パチンパチンと音をたてる程です.”価値ある本当の矯正治療”・・・を体現する一例です.

しっかりと噛めるという機能性に,20年間微塵も後戻りを起こさない安定性.さらにその上に構築された審美性.昨年も年に一度のフォローにお見えになり,DH= 歯科衛生士の一人により,歯周病による炎症の一切ない健康な歯茎が確認されました.ちょうど今年で矯正治療終了後25年経過しますので,医療安全のため,また資料を採得することをご了承いただき,皆様に紹介させていただく所存です.

矯正治療が終わっても歯並び・噛み合わせの安定性が得らえず,たちまち後戻りをしてしまえば,治療した意味がありません.

SuperimpositionOfAfteerPostRetention
セファロの重ね合わせによる治療終了後・保定完了後の安定性の評価
ToothFracture
親子2代にわたり“歯ぎしり・食いしばり”の研究を続けている押見先生の論文から身体中で一番固い歯が真っ二つに割れてしまっています

セファロについて連続してお伝えしてきた最後の話題,”矯正治療における安定性の判定”・・・にもセファロは有力な武器となります.専門的には”生理的顎位”・・・といいますが,矯正治療中にはこの位置が乱されることがないように,細心の注意を払って歯の移動を管理してゆきます.筋肉は自分の長さを記憶していますので,徒に引き延ばされたりすれば,もとの長さに戻ろうとして,食いしばり反射を始めます,これが歯や歯周組織に為害作用として働いて,歯の破折や歯根の断裂といった障害が生じます.

FractureOf Root
歯の根が不適正な噛み合わせの結果断裂してしまうことがあります

次回からは,兼ねてから矯正学の争点であり,学会レベルでは決着がついている,矯正歯科における抜歯の是非について,矯正治療後の安定性の確保の点から論じてゆこうと思います.

 

 

  1. セファロって何?
  2. セファロの歴史
  3. セファロの目的 A) 形態分析による矯正歯科診断・抜歯基準・矯正治療方針の立案 B) 矯正治療前後の比較による矯正治療効果の判定 C) 成長量・アゴの成長発育方向の判定 D) 矯正治療結果の安定性の判定