今回の記事は,2018年5月24日”「インビザラインでできないこと=バイオメカニクス理論に基づく歯の移動」” を編集,再録させていただくことで進行させていただきます.
「インビザラインでできないこと=バイオメカニクス理論に基づく歯の移動」
症例によっては,ワイヤー矯正でも,ストレートなワイヤーだけでは無理で,ループを曲げ込んで力を撓めたり,特に当院のMEMOメカニクスの源流であるインディアナ大のセグメンテッド・アーチ・テクニックでは,短いセクショナルアーチを用いた力学で逆傾斜した歯根を直立させ,さらに奥に傾斜させてゆきます.
以下再録
写真は矯正歯科専門医が行なった
矯正治療終了後10年が経過したTTさま 34歳
上下左右第一小臼歯=前から数えて4番目の歯
・・・を抜歯して矯正治療を行ないました
左)治療開始直後
・・・と
中)2ヶ月経過時
・・・と
右)矯正治療終了後10年が経過現在の安定した歯列
通常包括的な矯正治療は
矯正動的治療=実際に矯正装置をセットして
歯を動かしてゆく期間
2年を目安に行って参りますが
本症例では3年の矯正動的治療期間
・・・がかかりました
骨盤が生理的に動く女性と異なり
本来骨の硬い男性では
若干長い治療期間がかかるのが普通ですが
それにしても2年半ほど
この症例の治療期間が3年にも及んだ
その理由の一つが右下犬歯の根の逆傾斜
通常奥の方に向かう右下犬歯
・・・の根が
この症例では逆に
手前の方に傾斜して
隣の小臼歯とちょうど
“ハの字”状態を呈していました
このような症例のような場合
continuous= 連続したアーチワイヤーだけだと
改善に多大な時間がかかるため
写真でお分かりの通り
インディアナ大バーストン教授の
“セグメンテッド・アーチ・テクニック”
・・・元法により近く
“Canine uprighter (犬歯整直装置)”
・・・を用い
写真で赤の線で示した
近心= 前の方に向かって傾斜していた
全ての歯の中で一番長い犬歯の根を
遠心=奥の方に移動させてゆきました
インディアナ大バーストン教授
・・・は
それ以前は
定性的に行われていた矯正力学に
生力学= “バイオメカニクス”の概念を導き入れ
理詰でその定量化に成功したのです
バーストン教授がコネチカット大に栄転した後に着任した
ハリソン・フォードに似てかっこいい
ユージーン・ロバーツの講習を受講しましたので
元法通りでも治療はできますが
お口の中に10本ものワイヤーが入ります
実は
カマクラデントフェイシャルオーソピディクス・山本歯科・矯正
・・・でルーティーンに行われている”MEMO”テラピー
インディアナ大バーストン教授の
“セグメンテッド・アーチ・テクニック”
・・・を最大で3本のワイヤーで表現できるよう展開し
日本人に合わせたものにしたものなのです
(写真は矯正歯科医が行なった矯正治療終了後10年が経過したTTさま 34歳現在の安定した歯列)
①主訴 : 歯並びが悪い
②診断名あるいは主な症状 : 叢生
③年齢 : 21歳7ヶ月
④治療に用いた主な装置 : エッジワイズ装置
⑤抜歯部位 : 上下左右第一小臼歯
⑥治療期間 : 3年0 ヶ月
⑦治療費概算(外税) : 初診料 ¥5,000 診断料 ¥50,000 初診料 ¥820,000 処置料 ¥7,000
⑧リスク副作用 : 所見無し
上下左右第一小臼歯=前から数えて4番目の歯
写真の赤い⇦が示す
前から3番目の犬歯と
前から5番目の第二小臼歯
の間に存在した第一小臼歯
上下左右抜歯して矯正治療を行ないました
矯正動的治療=実際に矯正装置をセットして
歯を動かした期間=3年0ヶ月
・・・を経て矯正治療を終了し
ちょうど10年が経過しておりますが
抜歯した隙間=抜歯空隙
・・・の後戻りはみじんも見られません
上顎犬歯の尖頭を示す黒い↓
・・・も下顎の3番目の歯と5番目の歯が接する
コンタクトにピッタリ一致しています
また正中=上下歯列の
左右の一番前の歯が接する線
=緑の↓で示す
・・・がぴったりと一致している事がわかります
(写真は上と同じ患者さんTTさま 21歳現在の矯正治療開始前の状態)
術前では
左側では犬歯誘導が見られますが
右側の犬歯は本来の歯根の向きと逆に傾斜しています
正中もズレています
赤のXで示す4本の小臼歯を抜歯して
矯正治療を行いました
そもそも抜歯矯正は
インビザライン向きではないのですが
矯正専門の団体が全会員の
これまでフィニッシュした
全症例中の抜歯頻度が57.4%
・・・であったと報告しているところから見ても
不正咬合の半分強がこの方法に適さないことを示しています
インビザラインが不得意なひとつに
歯の軸傾斜の改善があります
どうですか?
インビザラインで矯正治療を経験した方
こんな風に治っていますか?
そして10年後までこんな風に安定していますか?
以後,下記のテーマで話を進めて参ります.
7)日本矯正歯科学会学会長が学会ニューズレターで”明らかにワイヤー矯正に比べ治療結果が劣る”・・・と表明
8)専門医会の調査から治っていると言えるのはおよそ10人にひとりかふたり
9)ワイヤーによるリファインメントの必要性が生じることがあるので,ワイヤー矯正をやっていない機関を受診するのは危険
10)生涯にわたる歯並び・かみ合わせの安定性を考慮した治療法の選択