(上は日本矯正歯科学会ニュースレターから会長の発言)
アクセス數から判定して,読者の皆様とてもインビザラインに興味があるようですので,学会レベルの正しい情報を,矯正歯科専門医がお伝えしようと思います.まずひとこと.インビザラインは現時点で,わが国における薬事法上(法律145号)の医療機器にも、歯科技工法上(法律168号)の矯正装置にも該当していません.
矯正歯科の先進国.ほとんど全ての人が,矯正治療の恩恵を受ける,アメリカ.・・・はニューヨークでの矯正治療費の相場は,ワイヤー= エッジワイズで,約$10,000= ¥1,110,000,で,インビザラインでは,約$13,000= ¥1,443,000.
症例によっては,インビザラインお誂え向き・・・を絵に描いたようなものもあるし,インビザラインで症例を選んで,驚くような優れた結果を出しているドクターも少数だがいるにはいる.
ただし,たとえインビザラインで矯正治療するとしても,必要なのはCCDカメラによるスキャンだけでなく,今回のテーマであるセファロ分析による顎態の診断.
いくら看板に矯正歯科や歯科・矯正歯科・・・とあったとしても,セファロの設備がなかったなら避けて通るべき.セファロを撮影したところで分析しない.または分析結果を見てもわからない,こんな歯医者は論外.たとえもし,インビザラインで矯正治療を始めるとしても,セファロ分析はじめ,歯型・パノラマレントゲン・顔面写真・口腔内写真・・・からなる試料の採取は,万が一裁判になった時にも証拠として必須のもの.
スピードラーニングの宣伝をしているゴルファーは,アメリカ人とまともにコミニュケートできないらしいが,語学に王道がないように,矯正治療もまた然り.
“短時間で簡単に治る”
“1円でも安いところを探す”
“自宅や学校,会社から近い”
“おじいさんもお母さんも昔から通っている”
“駐車場無料・キッズルーム完備・交通費負担”
夕方になると自転車がいっぱい並ぶ”・・・ちゃんもやってる”
・・・などと甘い言葉に騙され,矯正治療を始める時点ではスーパー・ハリウッド・スマイルへの期待いっぱいでも・・・
“待てど暮らせど何も起きない”
“だんだん口元がとんがってカッパみたいになり,顔はだんだんサル化してきた”
“頭が割れるように痛くなったので,矯正治療希望したところ,あなたが辞めるといったんだから返金はありません・・・”
・・・など,
“えっ!これでもう終わり?”
“装置をやめたら瞬く間に後戻り”
“歯がグラグラして噛めなくなってしまった”
“顎関節に障害が出た”
・・・などなどだまされたと分かるのは,治療開始後2年たった頃.すでに数十万の支払いも済んでいる.消費者庁長官もこれ以上返金トラブルが多いならエステ扱いすると日本矯正歯科学会に警告している.
これがもし矯正歯科の先進国= アメリカだったら,ADA= 歯科医師会から裁定委員が2名飛んできて,歯型・レントゲン・セファロなどを細かく調査の上,ドクター側に落ち度があるような場合には数千万もの賠償命令が降り,歯科医師免許も剥奪される.一方わが国ではほとんど全ての場合で患者の方が泣き寝入り.万が一矯正治療費の一部でも返還されるならまだしも,時間と健康被害は戻らない.
1900年にエドワード・アングルが全ての学閥と乖離し,フィラデルフィアに”アングル・スクール・オブ・オーソドンティア”・・・を設立してから今年で118年.もしあなたが一生に一度の問題として矯正治療に取り組むなら,知識・技術・経験に裏打ちされた公的機関からの公認を受けた矯正歯科医を受診し,歴史に裏打ちされた方法(time tested mechanics)で矯正治療を受けてください.
次回は・・・
“価値ある本当の矯正治療”・・・に欠かせないバイオメカニクスについて