「抜歯? 非抜歯?・・・」

成人女性叢生症例矯正治療前後
主訴 : 歯並びが悪い
診断名あるいは主な症状 : 叢生
年齢 : 18歳0ヶ月
治療に用いた主な装置 : ハーフリンガル装置
抜歯部位 : 上下左右第一小臼歯
治療期間 : 1年11ヶ月
治療費概算(外税) : 初診料 ¥5,000 診断料 ¥50,000 初診料 ¥930,000 処置料 ¥7,000
リスク副作用 : 所見無し

 

矯正治療を始めてゆく段階でいちばんの焦点となるところは,やはり抜歯して治してゆくべきか,非抜歯で治してゆくかの問題でしょう.

“抜くか抜かないか”・・・の問題は前世紀初頭からの論議の的でした.

抜歯?非抜歯?

このページでは,説明の合間合間に,矯正治療が終了して,
素晴らしい歯並び・噛み合わせになった5名の方たちが登場します.
どの方とどの方が,抜歯して矯正したのでしょうか?
どの方が非抜歯でフィニッシュしたのでしょうか?
どうか当ててみてください.解答は本ページ末にあります.

歯を抜いて治療すべきか? 抜かずに治療すべきか・・・この問題は,現代の歯科矯正治療におけるだけでなく,その歴史を通じて常に大きな論議の的でした.
それだけに数多くの研究が為され,時代ごとの多くの説やコンセンサスが台頭し,現代の診断基準に至っております.

前世紀のちょうど終わり頃,Dr.Greenfield を代表として,不正咬合を非抜歯で治してゆこうとする風潮が生まれました.彼は,全患者の98.5%について,非抜歯治療をおこない素晴らしい成果を挙げております.

抜歯?非抜歯?

Dr.Greenfieldは歯科大学卒業1971年から,日本矯正歯科学会大阪での彼の講演があった2000年までの29年間に,7000例の非抜歯での治療に成功しています.単純計算では,年間240名以上の患者さん方が1本の歯も抜歯することなく矯正治療を終了しています.確かに大切な歯ですので,抜かずに済めばそれに越したことはありません.ただし,ここで気をつけていただきたいのは,この方法での治療が成長期にある患者さんたちに限定しておこなわれているということです.矯正の先進国であるアメリカにおいては,矯正の中にもさらに専門分科ができ,舌側の見えない矯正しかしない先生や,成人だけしかみない,といったようにさまざまな得意分野をもつ先生がいらっしゃいます.この非抜歯治療のDr.Greenfield は,成長期にある子供しか見ません.それで98.5%もの歯を抜かないでおこなう治療に成功しているのです.ところが,日本では,なぜか早とちりをしてこの方法で成人を治療してしまって,すべての歯の根が歯茎から出てきてしまったとか,中間に存在する4番を抜歯すると,両となりの歯を平行に移動させてゆく技術がないために,かわりに一番奥にある7番を抜くといった不純な動機でこの方法を流用しているドクターもいるようなのです.第二大臼歯は立派な臓器ですので,私自身はその抜歯には原則として(親知らずをかみ合わせに参加させる場合を除いて)反対です.

抜歯?非抜歯?

画像説明 :

①主訴 : なし Dr. Baily より転院

②診断名あるいは主な症状 : 空隙歯列

③年齢 : 8歳4ヶ月

④治療に用いた主な装置 : エッジワイズ装置

⑤抜歯部位 : 非抜歯

⑥治療期間 : 5年2ヶ月

⑦治療費概算(外税) : 初診料 ¥5,000  診断料 ¥50,000  初診料 ¥540,000  処置料 ¥5,000

⑧リスク副作用 : 所見無し

ここで少しだけ,私たち人類の進化の話をさせていただきます.進化はターミナル・リダクションといって,中心から遠いところから起こってきます.私たちが尻尾を失ったのも.指の中で小指が一番小さいのも,また親知らずが生まれつきない人がいるも,この原理に従っているあらわれです.歯にしても,同じ名前のたとえば切歯では,中心に位置する中切歯より,その隣の側切歯のほうが小さくなっています.そんなふうにわたしたちの進化が進んできて,遺伝子による状況に合わせたさまざまな変化が生じてきたのですが,歯並びで言うとちょっとした不都合が生じてきました.それが何かというと,デコボコの歯並びが増えてきて,このままではものを噛むことができなくなって,人類が滅びてしまうのではないかという危惧が生じてきたことです.遺伝子は歯の大きさでそれを調節しようとしました.つまり,最も得意分野である側切歯や,同じ名前の歯でより中心からはずれた第二小臼歯の大きさを小さくすることによって,叢生(デコボコの歯並び)を解消しようと試みてきたのです.ところがそれが間違った,進化の袋小路に人類を誘導していることに最近このところやっと気付いたようなのです.つまり,どんなに第二小臼歯を小さくしたところで,八重歯や出っ歯はなくならず,奥歯が倒れてきて噛み合わせはもっと悪くなってしまうことに遺伝子は気付きました.これまでの得意分野での調節に失敗した遺伝子は,パニックを起こして,その結果多数歯欠損(当院では,一卵性双生児の方で,姉妹そろって10本づつ本来必要な歯が先天的に欠如した方がいます)などがおきやすい現象が生じているようです.

Ext?non?
抜歯して治すか非抜歯でゆくかそれが問題だ

私たちの現代は,遺伝子レベルの悠久の時の流れから見ると,進化の過渡期にあるようです.ある矯正歯科医の意見では,そのうち先天的に第一小臼歯が欠損した突然変異の子供たちか生まれてくることによって,この現象は解決するらしいのです.ところが彼のコンピュータシミュレーションからは,こういった未来は2000年も先の出来事らしいのです.つまり,25歳で次の世代が生まれてくるとして,80代も先のことのようなのです.それまでは私たちの歯科矯正の仕事はどうやら続いてゆくようです.また,一家庭内で獲得形質として,歯科矯正治療が数代にわたっておこなわれると,ひょっとして,この2000年はもう少し近いものになってくるかもしれません.実は,当院にひとりだけ全4本中3本の第一小臼歯を先天的に持って生まれなかった患者さんがいます.現代の歯科矯正治療は,いわば進化を先取りするような形でおこなわれているのです.

日本矯正歯科学会でも,抜歯非抜歯のコンセンサスを得るため,一方では前述のDr.Greenfield と,もう一方では抜歯はおこなうものの数十年にわたるすばらしい長期安定症例を多数お持ちのDr.Boley に討論のようなかたちで講演をおこなって戴き,そのうちからコンセンサスを導き出そうとする試みをしました.

Dr.Greenfield が最初に壇上に立ち,その非抜歯による素晴らしい理論を展開され,続いてDr.Boley が左・中・右の三連のスライドを駆使して矯正動的治療後の長期安定性について述べられました.Dr.Greenfield の方法も素晴らしいものでしたが,Dr.Boley が非抜歯治療とはそもそも拡大であるといった点に重きを置き,最後のスライドで日本の夏祭りで遊ぶ子供らの映像を映してこういわれました.「これらの人たちに,本当に10年後20年後の結果が出ていない方法で治療をおこなって本当にいいのでしょうか?」いつの日かDr.Greenfield の方法もきっとこうした time-tested を経て再び私たちの前に現れるでしょうが,その講演の座長を務められた福原昭和大学名誉教授が,20世紀初頭の著名な矯正歯科医であるDr. Calvin S. Case の言葉を引用して語った言葉をもって,日本矯正歯科学会としての統一見解としたようでした.すなわち,”The failure to extract teeth when demanded is quite as much malpractice as the extraction of the teeth when not demanded.(必要なときに抜歯しないでいるのは,抜歯をしてはいけない症例で抜歯をするのと全く同様,間違った治療だ.)”

抜歯?非抜歯?

それではクイズの正解です.一番目は抜歯.二番目から四番目まではすべて非抜歯.最後の五番目は抜歯症例です.
いかがでしたでしょうか? 全部正解でしたか? ごらんになってお分かりの通り,
きちんとした診断をしておこなわれた矯正治療では,それが抜歯によるものであっても非抜歯によるものであっても,
甲乙つけがたいほどの緊密な治療結果が得られます.きちんとした矯正歯科医を受診すればご心配は無用です.

 

  1. セファロって何?
  2. セファロの歴史
  3. セファロの目的 A) 形態分析による矯正歯科診断・抜歯基準・矯正治療方針の立案 B) 矯正治療前後の比較による矯正治療効果の判定 C) 成長量・アゴの成長発育方向の判定 D) 矯正治療結果の安定性の判定

「抜歯を伴う矯正治療の歴史」チャールズ・ツイードの功績

DrCharlesTweed

前々回,前回とお伝えしてきたように,矯正歯科の元祖,茶の湯で言えば千利休に当たる,エドワード・アングルは非抜歯論者でした.

“神様が32本の歯をくださった”・・・がその理論背景.

4本の小臼歯抜歯による,世界的にスタンダードとなっている,エッジワイズ治療法は,アングル門下のチャールズ・ツイードによって発展してきました.

ツイードは非抜歯論を貫徹したアングル師匠にいわば叛旗を翻したのでした.

なみ居る先輩たちが・・・

“アングル師匠の言うことを聞かなくちゃダメじゃないか!”

“じゃあいったい誰が1番うまく治せたかここに並べてみようじゃないか?”

・・・の一言で反駁し,やはりツイードの症例が他のどのオーソドンティストが治験した症例よりも優れていて,しかも何年立っても後戻りを起こさず,顔の美しさも優っていたのです.

彼のこの発言から現在に至るまで,わたしたち矯正歯科医は,学会で自分の治した症例の模型を陳列する事を連綿と続けてきております.

矯正歯科に従事するからには,症例展示は必須のこと.学会にも症例を提出しない,ホームページもイラストで済ませる.これには賛成できません.

TweedTriangle
抜歯基準のために設定されたツイード三角=IMPA90°が理想とされる

また,チャールズ・ツイードは,セファロ上で,ツイード三角を理想として,下顎下縁平面と下顎中切歯の歯軸のなす角度が 90 ° であるべきとしました.図に示した症例では,初診時 110°.ツイードが示した基準値である 90° にするためには,小臼歯抜歯をして,20° アップライトしなければなりません.2.5° = 1mm 換算しますので,この症例では 8mm. しかし,字面どおりでは,dish-in (お皿のような顔?) ・・・といって,おばあちゃまのような寂しい口元になってしまうので,実際にはこの半分 = 4mm のリトラクション= 後方移動を目標に,治療計画を設定してゆきます.

下顎下縁平面が緩やかな人も,急傾斜した方もいるので,のちにインディアナ大ではL1- NB= 4mm .下顎中切歯切縁とおでことB点(= 歯に影響されない歯槽最前方点) を結ぶ線までの距離が4mm が基準値であるとしました.ちなみに非抜歯論を掲げる学派の中には,こういった基準値を公にしている人は,まだいないようです.

 

  1. セファロって何?
  2. セファロの歴史
  3. セファロの目的 A) 形態分析による矯正歯科診断・抜歯基準・矯正治療方針の立案 B) 矯正治療前後の比較による矯正治療効果の判定 C) 成長量・アゴの成長発育方向の判定 D) 矯正治療結果の安定性の判定

「非抜歯で矯正するということは歯列を拡大すること!」

美少女製造業

「非抜歯で矯正するということは歯列を拡大すること!」

以前この blog でご紹介した通り

頭蓋は脳頭蓋と顔面頭蓋に分類されます

ヒトの顔を形づくる顔面頭蓋のうち

その80%が

上の歯が植わっている上顎骨と

下の歯が植わっている下顎骨

歯科大の法医学の教授が

乾燥頭蓋から粘土で生前の顔を再現する

複顔法についても紹介させていただきました

非抜歯で矯正するということは歯列を拡大すること!

・・・つまり

顔をでかくすること

おちょぼ口は褒め言葉

・・・でも

でかい口はそうではない

顔が小さいは褒め言葉

・・・でも

でかい顔はそうではない

看板には”歯科・矯正歯科”ってあるのに

セファロ分析もせずに (セファロって何?・・・にジャンプ!)

非抜歯非抜歯・・・っていって

拡大矯正歯科しかしないところに行けば

ブスにされてしまいます!

矯正専門開業団体が上げている歴史上全ての症例のうち

抜歯で治した比率は57.4%

大相撲の入幕に何か力が働いていることを見抜いたのは

アメリカの統計学者でした

通常の取り組みと明らかに開きがあったのです

非抜歯で矯正するということは歯列を拡大すること!

非抜歯しかしない?
カニじゃあるまいし
横にしか行けない?
プロなのに??

カニじゃあるまいし

横にしか行けない?

わたしたち矯正歯科医は

歯列を拡げたり

縮めたり

歯冠より長い歯の根をを平行移動させたり

歯を長くしたり

逆に骨の中に押し戻してゆくこともできます

拡大の技術しか持ち合わせていない歯医者は避けて無難です

 

  1. セファロって何?
  2. セファロの歴史
  3. セファロの目的 A) 形態分析による矯正歯科診断・抜歯基準・矯正治療方針の立案 B) 矯正治療前後の比較による矯正治療効果の判定 C) 成長量・アゴの成長発育方向の判定 D) 矯正治療結果の安定性の判定

「矯正歯科における抜歯の是非-矯正治療後の安定性の確保の点から」

NonExtGrowingCase

(上の写真は矯正歯科医が治療したムシ歯が1本もない非抜歯= どこの歯も抜かずに治した矯正歯科治療成長期女性症例)

兼ねてから矯正学の争点であり,学会レベルでは決着がついている,矯正歯科における抜歯の是非について,矯正治療後の安定性の確保の点から論じてゆこうと思います.まず,その1回目の話題は・・・”頬筋機構”

BaccinatorMechanism
外側からは顔の筋肉がマスクのように内側からは舌圧が歯列を安定させる

図は,矯正歯科学の聖書とも言われる,グレーバーのブルーブックから

頬筋機構= バクシネーター・メカニズム= baccinator mechanism

筋学
頰と舌の圧力の均衡が歯列を安定させる

歯列は,外側からは

顔の筋肉である口輪筋・頬筋と上咽頭収縮筋がマスクのように取り巻く

一方で

内側からは舌の存在が舌圧としてかかり

その双方の均衡から正しい形態を備え安定します

頬筋機構
キレイな歯列は顔の筋肉と舌圧のバランスから

ワイヤー矯正であろうと

インビザラインであろうと

セファロ分析もせずに

非抜歯非抜歯といって拡大して

頬筋機構の均衡を乱せば

たちまち後戻りを起こします

価値ある本当の矯正矯正治療は

セファロ分析による診断から・・・

 

 

  1. セファロって何?
  2. セファロの歴史
  3. セファロの目的 A) 形態分析による矯正歯科診断・抜歯基準・矯正治療方針の立案 B) 矯正治療前後の比較による矯正治療効果の判定 C) 成長量・アゴの成長発育方向の判定 D) 矯正治療結果の安定性の判定

セファロの目的  D) 矯正治療結果の安定性の判定

20YrsPostRetentionOrthoCase

矯正歯科の目標は・・・

  1. 機能性の回復= しっかりと噛めること.車検からピカピカで返ってきても,エンジンがかからなければダメ!
  2. 安定性の確保= この症例のように,10年経っても,20年経っても安定して,くずれない歯列.
  3. 審美性の獲得= 片目の美女がありえないように,従前の機能の上に立つ美.

ここで,カマクラデントフェイシャルオーソピディクス・山本歯科・矯正 = 矯正歯科鎌倉 dentfaco  blog が,sixcre サーバー上に移行した直後にご紹介させていただいた,矯正治療終了後20年が経過した安定症例に登場していただきましょう.

上に掲げた症例TRさま.

画像説明 : TRさまは,18歳の半ば,矯正装置=ブレースを付けたまま,アメリカから帰国しました.当院院長が所属しているAAO= アメリカ矯正歯科医師会は,世界中にネットワークを持ち,ブレース = 矯正装置をつけたままの転院が可能です.治療費のバランスフォームまで含んだトランスファーフォームがあるのです.当院での1年半におよぶ矯正動的継続治療を経てフィニッシュしました.

上に掲げた画像は,矯正装置を外してから20年が経過した時点ものです.すべての歯が,まっすぐで,隙間なく,デコボコもなく,4歯の小臼歯抜歯をアメリカにてすでに済ませていましたが,抜歯空隙も微塵も残っておらず,フロスを通せば,パチンパチンと音をたてる程です.”価値ある本当の矯正治療”・・・を体現する一例です.

しっかりと噛めるという機能性に,20年間微塵も後戻りを起こさない安定性.さらにその上に構築された審美性.昨年も年に一度のフォローにお見えになり,DH= 歯科衛生士の一人により,歯周病による炎症の一切ない健康な歯茎が確認されました.ちょうど今年で矯正治療終了後25年経過しますので,医療安全のため,また資料を採得することをご了承いただき,皆様に紹介させていただく所存です.

矯正治療が終わっても歯並び・噛み合わせの安定性が得らえず,たちまち後戻りをしてしまえば,治療した意味がありません.

SuperimpositionOfAfteerPostRetention
セファロの重ね合わせによる治療終了後・保定完了後の安定性の評価
ToothFracture
親子2代にわたり“歯ぎしり・食いしばり”の研究を続けている押見先生の論文から身体中で一番固い歯が真っ二つに割れてしまっています

セファロについて連続してお伝えしてきた最後の話題,”矯正治療における安定性の判定”・・・にもセファロは有力な武器となります.専門的には”生理的顎位”・・・といいますが,矯正治療中にはこの位置が乱されることがないように,細心の注意を払って歯の移動を管理してゆきます.筋肉は自分の長さを記憶していますので,徒に引き延ばされたりすれば,もとの長さに戻ろうとして,食いしばり反射を始めます,これが歯や歯周組織に為害作用として働いて,歯の破折や歯根の断裂といった障害が生じます.

FractureOf Root
歯の根が不適正な噛み合わせの結果断裂してしまうことがあります

次回からは,兼ねてから矯正学の争点であり,学会レベルでは決着がついている,矯正歯科における抜歯の是非について,矯正治療後の安定性の確保の点から論じてゆこうと思います.

 

 

  1. セファロって何?
  2. セファロの歴史
  3. セファロの目的 A) 形態分析による矯正歯科診断・抜歯基準・矯正治療方針の立案 B) 矯正治療前後の比較による矯正治療効果の判定 C) 成長量・アゴの成長発育方向の判定 D) 矯正治療結果の安定性の判定

インビザラインやめたほうがいい10の理由= 一矯正歯科医の意見 6) 抜歯して治した症例も見たことはあるが,抜歯空隙も閉じ切ってなくて,不完全であり,長期間の安定性が得られるとはおよそ思えない

AxialInclinationImprovement

「インビザラインでできないこと=バイオメカニクス理論に基づく歯の移動」

症例によっては,ワイヤー矯正でも,ストレートなワイヤーだけでは無理で,ループを曲げ込んで力を撓めたり,特に当院のMEMOメカニクスの源流であるインディアナ大のセグメンテッド・アーチ・テクニックでは,短いセクショナルアーチを用いた力学で逆傾斜した歯根を直立させ,さらに奥に傾斜させてゆきます.

写真は矯正歯科専門医が行なった

矯正治療終了後10年が経過したTTさま 34歳

上下左右第一小臼歯=前から数えて4番目の歯

・・・を抜歯して矯正治療を行ないました

左)治療開始直後

・・・と

中)2ヶ月経過時

・・・と

右)矯正治療終了後10年が経過現在の安定した歯列

通常包括的な矯正治療は

矯正動的治療=実際に矯正装置を入れて

歯を動かしてゆく期間

2年を目安に行って参りますが

本症例では3年の矯正動的治療期間

・・・がかかりました

骨盤が生理的に動く女性と異なり

本来骨の硬い男性では

若干長い治療期間がかかるのが普通ですが

それにしても2年半ほど

この症例の治療期間が3年にも及んだ

その理由の一つが右下犬歯の根の逆傾斜

通常奥の方に向かう右下犬歯

・・・の根が

この症例では逆に

手前の方に傾斜して

隣の小臼歯とちょうど

“ハの字”状態を呈していました

BiomechanicsInOrthodontics
矯正歯科学におけるバイオメカニクス=生力学

このような症例のような場合

continuous= 連続したアーチワイヤーだけだと

改善に多大な時間がかかるため

写真でお分かりの通り

インディアナ大バーストン教授の

“セグメンテッド・アーチ・テクニック”

・・・元法により近く

“Canine uprighter (犬歯整直装置)”

・・・を用い

写真で赤の線で示した

近心= 前の方に向かって傾斜していた

全ての歯の中で一番長い犬歯の根を

遠心=奥の方に移動させてゆきました

インディアナ大バーストン教授

・・・は

それ以前は

定性的に行われていた矯正力学に

生力学= “バイオメカニクス”の概念を導き入れ

理詰でその定量化に成功したのです

バーストン教授がコネチカット大に栄転した後に着任した

ハリソン・フォードに似てかっこいい

ユージーン・ロバーツの講習を受講しましたので

元法通りでも治療はできますが

お口の中に10本ものワイヤーが入ります

IndianaUnivSegmentedArchTechnique
10本のワイヤーがいちどきに口に入るインディアナ大セグメンテッドアーチテクニック

実は

カマクラデントフェイシャルオーソピディクス・山本歯科・矯正

・・・でルーティーンに行われている”MEMO”テラピー

インディアナ大バーストン教授の

“セグメンテッド・アーチ・テクニック”

・・・を最大で3本のワイヤーで表現できるよう展開し

日本人に合わせたものにしたものなのです

MaleAdultCrowdingExtCase
右下犬歯の逆傾斜を伴う成人男性叢生症例治療後

①主訴 : 歯並びが悪い

②診断名あるいは主な症状 : 叢生

③年齢 : 21歳7ヶ月

④治療に用いた主な装置 : エッジワイズ装置

⑤抜歯部位 : 上下左右第一小臼歯

⑥治療期間 : 3年0  ヶ月

⑦治療費概算(外税) : 初診料 ¥5,000  診断料 ¥50,000  初診料 ¥820,000  処置料 ¥7,000

⑧リスク副作用 : 所見無し

上下左右第一小臼歯=前から数えて4番目の歯

写真の赤い⇦が示す

前から3番目の犬歯と

前から5番目の第二小臼歯

の間に存在した第一小臼歯

上下左右抜歯して矯正治療を行ないました

矯正動的治療=実際に矯正装置をセットして

歯を動かした機関=3年0ヶ月

・・・を経て矯正治療を終了し

ちょうど10年が経過しておりますが

抜歯した隙間=抜歯空隙

・・・の後戻りはみじんも見られません

上顎犬歯の尖頭を示す黒い↓

・・・も下顎の3番目の歯と5番目の歯が接する

コンタクトにピッタリ一致しています

また正中=上下歯列の

左右の一番前の歯が接する線

=緑の↓で示す

・・・がぴったりと一致している事がわかります

MaleAdultCrowdingExtCaseBefore
右下犬歯の逆傾斜を伴う成人男性叢生症例治療前

(写真は上と同じ患者さんTTさま  21歳現在の矯正治療開始前の状態)

術前では

左側では

犬歯誘導が見られますが

右側の犬歯は

本来の歯根の向きと逆に

傾斜しています

正中の一致もみられません

赤のXで示す4本の小臼歯を抜歯して

矯正治療を行いました

そもそも抜歯矯正は

インビザライン向きではないのですが

矯正専門の団体が全会員の

これまでフィニッシュした

全症例中の抜歯頻度が57.4%

・・・であったと報告しているところから見ても

不正咬合の半分強がこの方法に適さないことを示しています

インビザラインが不得意なひとつに

歯の軸傾斜の改善があります

どうですか?

インビザラインで矯正治療を経験した方

こんな風に治っていますか?

そして10年後までこんな風に安定していますか?

以後,下記のテーマで話を進めて参ります.

7)日本矯正歯科学会学会長が学会ニューズレターで”明らかにワイヤー矯正に比べ治療結果が劣る”・・・と表明

8)専門医会の調査から治っていると言えるのはおよそ10人にひとりかふたり

9)イヤーによるリファインメントの必要性が生じることがあるので,ワイヤー矯正をやっていない機関を受診するのは危険

10)生涯にわたる歯並び・かみ合わせの安定性を考慮した治療法の選択

臭う・臭い・・・インビザライン 自体は無味無臭.汚れたままの歯にかぶせるから.矯正治療は予防歯科の一環.歯ブラシ指導もしないで,歯を動かしてゆくこと自体が問題.

  1. セファロって何?
  2. セファロの歴史
  3. セファロの目的 A) 形態分析による矯正歯科診断・抜歯基準・矯正治療方針の立案 B) 矯正治療前後の比較による矯正治療効果の判定 C) 成長量・アゴの成長発育方向の判定 D) 矯正治療結果の安定性の判定

Invisalign= インビザラインとエッジワイズ装置=ワイヤー矯正の比較

AlertJOS

(上は日本矯正歯科学会ニュースレターから会長の発言)

アクセス數から判定して,読者の皆様とてもインビザラインに興味があるようですので,学会レベルの正しい情報を,矯正歯科専門医がお伝えしようと思います.まずひとこと.インビザラインは現時点で,わが国における薬事法上(法律145号)の医療機器にも、歯科技工法上(法律168号)の矯正装置にも該当していません.

矯正歯科の先進国.ほとんど全ての人が,矯正治療の恩恵を受ける,アメリカ.・・・はニューヨークでの矯正治療費の相場は,ワイヤー= エッジワイズで,約$10,000= ¥1,110,000,で,インビザラインでは,約$13,000= ¥1,443,000.

症例によっては,インビザラインお誂え向き・・・を絵に描いたようなものもあるし,インビザラインで症例を選んで,驚くような優れた結果を出しているドクターも少数だがいるにはいる.

ただし,たとえインビザラインで矯正治療するとしても,必要なのはCCDカメラによるスキャンだけでなく,今回のテーマであるセファロ分析による顎態の診断.

いくら看板に矯正歯科や歯科・矯正歯科・・・とあったとしても,セファロの設備がなかったなら避けて通るべき.セファロを撮影したところで分析しない.または分析結果を見てもわからない,こんな歯医者は論外.たとえもし,インビザラインで矯正治療を始めるとしても,セファロ分析はじめ,歯型・パノラマレントゲン・顔面写真・口腔内写真・・・からなる試料の採取は,万が一裁判になった時にも証拠として必須のもの.

スピードラーニングの宣伝をしているゴルファーは,アメリカ人とまともにコミニュケートできないらしいが,語学に王道がないように,矯正治療もまた然り.

“短時間で簡単に治る”

“1円でも安いところを探す”

“自宅や学校,会社から近い”

“おじいさんもお母さんも昔から通っている”

“駐車場無料・キッズルーム完備・交通費負担”

夕方になると自転車がいっぱい並ぶ”・・・ちゃんもやってる”

・・・などと甘い言葉に騙され,矯正治療を始める時点ではスーパー・ハリウッド・スマイルへの期待いっぱいでも・・・

“待てど暮らせど何も起きない”

“だんだん口元がとんがってカッパみたいになり,顔はだんだんサル化してきた”

“頭が割れるように痛くなったので,矯正治療希望したところ,あなたが辞めるといったんだから返金はありません・・・”

・・・など,

“えっ!これでもう終わり?”

“装置をやめたら瞬く間に後戻り”

“歯がグラグラして噛めなくなってしまった”

“顎関節に障害が出た”

・・・などなどだまされたと分かるのは,治療開始後2年たった頃.すでに数十万の支払いも済んでいる.消費者庁長官もこれ以上返金トラブルが多いならエステ扱いすると日本矯正歯科学会に警告している.

これがもし矯正歯科の先進国= アメリカだったら,ADA= 歯科医師会から裁定委員が2名飛んできて,歯型・レントゲン・セファロなどを細かく調査の上,ドクター側に落ち度があるような場合には数千万もの賠償命令が降り,歯科医師免許も剥奪される.一方わが国ではほとんど全ての場合で患者の方が泣き寝入り.万が一矯正治療費の一部でも返還されるならまだしも,時間と健康被害は戻らない.

1900年にエドワード・アングルが全ての学閥と乖離し,フィラデルフィアに”アングル・スクール・オブ・オーソドンティア”・・・を設立してから今年で118年.もしあなたが一生に一度の問題として矯正治療に取り組むなら,知識・技術・経験に裏打ちされた公的機関からの公認を受けた矯正歯科医を受診し,歴史に裏打ちされた方法(time tested mechanics)で矯正治療を受けてください.

次回は・・・

“価値ある本当の矯正治療”・・・に欠かせないバイオメカニクスについて

  1. セファロって何?
  2. セファロの歴史
  3. セファロの目的 A) 形態分析による矯正歯科診断・抜歯基準・矯正治療方針の立案 B) 矯正治療前後の比較による矯正治療効果の判定 C) 成長量・アゴの成長発育方向の判定 D) 矯正治療結果の安定性の判定

NG矯正その2 “もうやめて!イッタリキタリ矯正”

SkeletalAnchorageSystem+Aligner

副題 : “インプラント矯正やりません!”

keyword : イッタリキタリ矯正 インプラント矯正 拡大床 マウスピース矯正

昨今わが国の巷で行われている,矯正歯科認定医や矯正歯科専門医を持たないにも拘らず,矯正歯科や歯科・矯正歯科の看板を掲げている,GP= 一般歯科医による被害についての二つ目の報告です.

本来118年の歴史を持つ現代歯科矯正学(current orthodontics)・・・に流行り廃りなどもないのですが,最近”流行っている”方法に拡大床とマウスピース矯正とインプラント矯正が有ります.

いずれもカマクラデントフェイシャルオーソピディクスでは現在行ってはおりません.

今回は
“インプラント矯正”・・・について.

インプラント矯正・・・は,ホネに金属の杭・・・を打って,それを固定源として歯を動かしてゆく方法で,それ自体は大して害を及ぼすものでは有りません.”インプラント矯正”の手法を用いて素晴らしい結果を出している国内・海外の先生も知っています.

利点としては・・・

  1. 努力がいらないこと.
  2. 矯正のプロとしての教育を受けていなくても,つまり,バイオメカニクスの理解なしでも,失敗することなく,ある程度歯を並べてゆくことができる.
  3. 歯列の最後臼歯のさらに最後に植立することによって歯列全体を後方に移動でき,非抜歯の機会が増える.

・・・など.

一方欠点としては

  1. 強い力がかかってしまい,骨の表面が岩のようにデコボコしてしまう.
  2. 歯根吸収が起きやすい.
  3. 異物を外科処置で埋入するため感染することがある.矯正歯科鎌倉 dentfacoではSAS= ホネをアンカーとしたこの方法行なっていないのですが,過去に九州にある大学から転院してきた症例で,頬骨弓にこのインプラント矯正が施されていたことがありました.この患者さんの口腔衛生習慣によるものとも思われますが,冬になるとインプラント体の周辺から排膿していました.頬骨弓は眼目の直下にありますので,ちょっと心配しました.

・・・など.

矯正歯科医におけるセファロのメリットについて,シリーズでお伝えしている最中ですが,セファロ分析の結果の診断結果に立脚した治療方針の立案では,治療の方向が,一定でブレることなく,いい歯並び・かみ合わせである結果に向かってまっしぐらに進めることが挙げられます.

ここで,最近”流行っている”拡大床とインプラント矯正のコンビネーションで行われることが多い最近の矯正治療に警鐘.

“あとでインプラントを打って引っ込めてゆくのに,
なぜ学童期=混合歯列期に拡大床を入れて顎を拡大するのですか?”

以前の blog でも語った通り,いつもだと鎌倉駅に降り立っても,江ノ電を乗り継ぎ,鎌高前の”スラムダンク踏切”に沿って,七里ヶ浜シーサイド通りを潮端に沿って,捻れた音叉の形をした坂を登攀して,我が家に帰るのですが,今夜は三日続いた学会出席の後でもうへとへと.駅前からタクシーに乗ったところ,タクシーは若宮大路を八幡様の方に左折.八幡宮を右に見て,巨福呂坂・・・を今帰ってきたばかりの東京方面に向かって・・・なんて勘弁して欲しいですよね!

歯も生き物です.あまりに意味もなく,揺さぶりをかけられ”イッタリキタリ矯正”・・・されれば,歯根吸収や歯槽骨の退縮をおこします.

冒頭副題で述べた通り矯正歯科鎌倉 dentfacoでは,”インプラント矯正やりません!”

その理由は,デントフェイシャルオーソピディクス=顎外力=整形力を用いた=非外科処置を旨とした顎顔面整形歯科を信条とし日常診療を行っているからです.

  1. セファロって何?
  2. セファロの歴史
  3. セファロの目的 A) 形態分析による矯正歯科診断・抜歯基準・矯正治療方針の立案 B) 矯正治療前後の比較による矯正治療効果の判定 C) 成長量・アゴの成長発育方向の判定 D) 矯正治療結果の安定性の判定

“ヒロゲッパ矯正の怪”

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展開中のセファロの話題も,余すところあと

D) 矯正治療結果の安定性の判定

・・・のみですが,少し後回しにして,火急の問題として,昨今巷で行われている “NG矯正”・・・についてもう少し語ってゆこうと思います.

上の写真は,同じJBO公認のJSO= 矯正歯科専門医会会員= 三重県伊賀市のアイウエオ矯正歯科院長である廣島邦泰(ヒロシマクニヤス)先生のウエブサイトからお借りしました.昨今のわが国における矯正歯科事情を的確に表現しているからです.

AIUEOrthod
これも三重県伊賀市アイウエオ矯正歯科ウエブサイトから

“NG矯正” の命名者ももしかしてこの先生?専門医会で今度会った時に訊いてみます.

セファロを用いた診断では,将来の歯並び・かみ合わせを,数値化して,目標がはっきりと見えるので,一直線にそこに向かって進んでゆくことができるのですが,巷では,実際そうはなっていないことが,矯正材料の売り上げから明らかになってきております.

なんでこんなものが売れるようになってきたのだろう??

 

元々は,唇顎口蓋裂の患者さんで,上アゴの破裂部にホネがないために,このようなスクリューの装置で上アゴの真ん中の骨の縫合部を割って,上アゴのホネを側方に拡大するのに使う整形装置だった.

こんなものを,女の子が型をとって,先生は診もせずに技工所送り,1週間ほどで出来上がってくると,女の子がセットして,先生は診もせずに,はい30万・・・なんてことが行われているようだ.

拡大床
拡大床

この装置本来はプロである矯正専門医が,施設基準を得て,健康保険で,唇顎口蓋裂の患者さんの治療に用いる装置だった.

それがいつの間にか,矯正材料屋が,売って,売って,笑いが止まらないほど,全矯正材料のうちで1番の売り上げを誇るものとなった.

ところで,この本来はプロである矯正歯科医が使う整形装置.セファロも撮らない矯正素人が,測りもしないで使用して危険はないのだろうか?

だって,アゴのホネが左右に割れて上アゴが大きくなる.成長期では確かに添加性に骨添加がおこって上顎骨は大きくなり,よりたくさんの歯が並ぶようにはなる.でも上だけ大きくしたら,下の歯列とかみ合わなくならないか?

小顔は褒め言葉,大顔はそうでない.オチョボ口は褒め言葉,大口はそうではない.わたしは顔は大事なもの.セファロを撮って計測もせずに,ただ徒に大きくしていいものだとは思いません.

“イッタリキタリ矯正の怪”・・・に続く

 

 

  1. セファロって何?
  2. セファロの歴史
  3. セファロの目的 A) 形態分析による矯正歯科診断・抜歯基準・矯正治療方針の立案 B) 矯正治療前後の比較による矯正治療効果の判定 C) 成長量・アゴの成長発育方向の判定 D) 矯正治療結果の安定性の判定

成長期に行われるセファロなしの矯正治療の危険性 (サイレント矯正= 待てど暮らせど歯が動いている気配無し)

サイレント矯正

副題 : カマクラデントフェイシャルオーソピディクスでは,一般歯科でのNG矯正の後始末として,やり直し矯正にも積極的に取り組んでおります.

keyword : NG 矯正・やり直し矯正・出っ歯・抜歯

画像説明 :

①主訴 : なし 東京の一般歯科医院より転院

②診断名あるいは主な症状 : malpractice

③年齢 : 12歳8ヶ月

④治療に用いた主な装置 : エッジワイズ・クリア装置

⑤抜歯部位 : 非抜歯

⑥治療期間 : 3年9ヶ月

⑦治療費概算(外税) : 初診料 ¥5,000  診断料 ¥50,000  初診料 ¥600,000  処置料 ¥5,000

⑧リスク副作用 : 所見無し

混合歯列期ではありませんでしたが,学童期にあるこんな患者さんが来院されました.なんでも,最近東京から,鎌倉に引っ越して来て,東京で矯正治療を始めたので,そのまま継続して東京まで通うつもりである.ただし,装置が取れてしまったり,当たって痛かったりしたときだけ診てもらえないか?” もちろんOKです!”

ところが来院されて診ると,上の写真左に見るように,歯は並んでいるんですが,かみ合わせの原則が無視されています.

“どんなところが気になって矯正治療を始めたんですか?”・・・って聞いてみると,

“出っ歯を治したい・・・”・・・って回答が帰ってきました.

“このままでは奇跡が起きたって出っ歯は治りませんよ!”

・・・だって装置は上の前歯から中間歯の10歯に入っているだけで,上の奥歯にも下の歯列全体にもなんら装置は見られません.”出っ歯を治すんだったら・・・

  1. 奥にも装置を入れて固定する.
  2. 上だけ左右小臼歯を2歯抜歯して前歯を後退させる.
  3. 下の歯列にも装置をセットして,顎間ゴムをかける

・・・などの何らかの矯正力をかけなければ出っ歯は治りません”

この患者さん,前々から,”いつになったら歯は引っ込むんだろう?”待てど暮らせど何も起きないことに疑問を感じていらしたので,鎌倉 dentfaco 山本歯科・矯正・・・に転院することを意思決定されました.

上の写真右が当院でのやり直し矯正で結果です.治療期間2年5ヶ月(最初から当院を受診されれば1年半ほどの症例)赤の矢印で示したように,当院初診時全くズレた関係を示していた犬歯関係は,当院やり直し矯正後ではぴったりと一致しています.

矯正装置-ブレース自体p価値
矯正治療が終了していい歯並びかみ合わせになれば外し捨ててしまう矯正装置は建築における足場以上の価値を持たない.

矯正装置自体にはなんら価値はありません.建築でいえば足場に当たるものですので,矯正治療が終了して,いい歯並び・かみ合わせになれば,外して捨ててしまいます.この症例では東京での前医に支払った費用は30万円.前医からの返金は一切ありませんでした.

もう一つ重要な点があります.矯正歯科の仁義に則って初診時の資料を請求しましたところ,”非抜歯にて矯正治療を始めました.資料はありません.”・・・

NG矯正のほとんどすべてがこの方同様なんの資料も無く,セファロ分析もされず,ただ歯に装置を貼り付けてワイヤーを通すだけ.それでも何十万かの治療費は課金され.また治療が失敗に終わっても,患者さんの泣き寝入りで,非を認めようとせず,返金もされません.大工さんに家を建てるって頼んでも “アイヨ!”・・・って,図面もひかずに柱を立て始めたなんてことないのに.

消費者庁長官がこれ以上返金トラブルが多いと,エステ扱いにすると学会に警告したことはすでに語りました.

それでは,こういった災禍に会わないで済む秘訣を語って本日の blog を終了します.

  1. 資料採取したか?
    矯正治療前写真
    価値ある本当の矯正治療開始に必須の矯正治療前写真
    矯正治療後写真
    価値ある本当の矯正治療開始に必須の矯正治療後写真
    パントモレントゲン
    価値ある本当の矯正治療前に必要なパントモレントゲン
    歯の模型
    価値ある本当の矯正治療前に必要な歯の模型
    セファロ
    価値ある本当の矯正治療前に必要なセファロレントゲン

    セファロ分析
    価値ある本当の矯正治療前に必要なセファロ分析
  2. 全ての症例で非抜歯といってないか?
    拡大矯正
    非抜歯で矯正治療するということは歯列を拡大することに他ならない

    矯正治療をプロとして行ってゆく上で必要なのは,歯列を拡大するだけでなく,縮小させることも,高くすることも,低くすることも可能でなければならない.(カニじゃないんだから・・・)

  3. 認定医もしくは専門医公認を受けているか?

ほとんどの大学において歯科矯正学は卒後教育と捉えられており,サワリしか教えていない.ちなみに母校では,試験は教科書持ち込みだった.

今回の症例治療前の写真です.

NG矯正1
矯正装置はセットしたものの歯は動かないサイレント矯正前

今回の症例治療後の写真です.

NG矯正1
矯正装置はセットしたものの歯は動かないサイレント矯正後
NG矯正1治療前後のセファロの重ね合わせ
患者さんの希望した通り出ていた上の前歯が後退しました

やり直し矯正治療前後のセファロの重ね合わせです.

一般歯科医の中にもしっかり勉強されている方もお見えになりますが,このような症例を散見することが多くなった昨今です.矯正治療はプロである矯正歯科医に任せた方が無難です.

 

 

  1. セファロって何?
  2. セファロの歴史
  3. セファロの目的 A) 形態分析による矯正歯科診断・抜歯基準・矯正治療方針の立案 B) 矯正治療前後の比較による矯正治療効果の判定 C) 成長量・アゴの成長発育方向の判定 D) 矯正治療結果の安定性の判定